Windows11にアップグレードしてから、お使いのパソコンの動作が急に遅いと感じていませんか?特にハードディスク(HDD)を搭載したモデルでは、この問題が顕著に現れることがあります。その主な原因は、多くの場合ディスク使用率100%の状態にあり、OSの要求性能とハードウェアの限界が衝突していることに起因します。
この記事では、すぐにできる高速化として不要ファイル削除やスタートアップ無効化の方法から、より専門的なデフラグによる最適化、視覚効果をパフォーマンス優先に切り替える設定まで、具体的な手順を網羅的に解説します。
また、Windows Update後の不具合や、一見関係なさそうに見えるCPU使用率の上昇、メモリ不足がHDDへ与える影響といった複合的な要因についても掘り下げ、見落としがちなウイルススキャンによるチェックの重要性も説明します。
様々な対策を試しても改善しない場合、最終的にはMiniTool Partition Wizardのような専用ソフトを使った簡単なSSD換装が最も効果的な根本解決策であることをご紹介します。
- HDD搭載PCでWindows 11が遅くなる根本的な原因
- 自分で簡単に試せる具体的なパフォーマンス改善策の数々
- HDDが故障寸前でないかを確認する健康診断の方法
- 最も効果的な解決策であるSSD換装の理由と手順
Windows11でHDDが遅いと感じる原因と応急対策
- 原因はディスク使用率100%の状態
- 不要ファイル削除ですぐにできる高速化
- スタートアップ無効化で起動を改善
- デフラグによる最適化はHDDに有効
- 視覚効果よりパフォーマンス優先に設定
- 電源プランの見直しでパフォーマンスを最大化
原因はディスク使用率100%の状態

Windows 11をHDDで利用する際に動作が遅くなる最大の原因は、「ディスク使用率100%」という現象に集約されます。これは、HDDが処理能力の限界に達し、OSやアプリケーションからの読み書き要求に応えきれていない状態を示しています。
この状態は、キーボードのCtrl + Shift + Escキーを同時に押してタスクマネージャーを起動し、「パフォーマンス」タブの「ディスク」項目を見ることで確認できます。「アクティブな時間」が常に100%に張り付いている場合、HDDがボトルネックになっていることは明らかです。
なぜHDDはボトルネックになるのか?
Windows 11は、高速なデータアクセスが可能なSSD(ソリッドステートドライブ)を前提に設計されています。OSの起動やアプリの動作には、ディスク上の様々な場所に散らばった小さなファイルを高速に読み書きする「ランダムアクセス」性能が求められます。
しかし、HDDは物理的な円盤(プラッター)を回転させ、磁気ヘッドを動かしてデータを読み書きする機械的な構造のため、このランダムアクセスが極端に苦手です。OSからの大量の要求にHDDが追いつけず、結果としてシステム全体の動作が遅延するのです。
特に、ユーザーの利用パターンを学習してアプリの起動を高速化しようとする「SysMain」サービスや、ファイル検索を高速化するための「Windows Search」サービスは、バックグラウンドで大量のディスクアクセスを行うため、HDD環境では逆効果となり、ディスク使用率100%の主な原因となることがあります。
不要ファイル削除ですぐにできる高速化

ディスクへの負荷を軽減し、パフォーマンスを改善する最も手軽な方法の一つが、不要なファイルを削除してHDDの空き容量を確保することです。空き容量が少ないと、ファイルの断片化が起こりやすくなり、読み書き速度がさらに低下する原因となります。
方法1:ディスククリーンアップ
昔からWindowsに搭載されている信頼性の高いツールです。スタートメニューで「ディスククリーンアップ」と検索して起動し、Cドライブを選択します。スキャン後、「システムファイルのクリーンアップ」をクリックすると、古いWindows Updateのバックアップなど、数ギガバイト単位の大きなファイルを安全に削除できます。
方法2:ストレージセンサー
Windows 11の「設定」アプリに搭載された新しい機能です。「設定」→「システム」→「ストレージ」と進み、「ストレージセンサー」をオンにするだけで、一時ファイルやごみ箱内のファイルを定期的に自動で削除してくれます。すぐに効果を得たい場合は、「今すぐストレージセンサーを実行する」をクリックしましょう。
スタートアップ無効化で起動を改善

パソコンの起動が特に遅いと感じる場合、Windowsと同時に起動する「スタートアッププログラム」が多すぎることが原因かもしれません。これらのプログラムは起動時に一斉にディスクアクセスを行うため、HDDに大きな負荷をかけます。
スタートアッププログラムの管理は、タスクマネージャーから簡単に行えます。
- Ctrl + Shift + Escキーでタスクマネージャーを起動します。
- 左側のメニューから「スタートアップ アプリ」タブを選択します。
- 一覧が表示されるので、不要なアプリケーションを選択し、右上の「無効化」ボタンをクリックします。
どのプログラムを無効にすべきか迷った場合は、一覧に表示される「スタートアップへの負荷」を参考にしましょう。「高」と表示されているものを無効にすると、特に大きな改善が期待できます。ただし、セキュリティソフトなど、常駐が必要なプログラムを誤って無効にしないよう注意が必要です。
デフラグによる最適化はHDDに有効

デフラグメンテーション(デフラグ)とは、HDD上でバラバラに保存されてしまったファイル(断片化したファイル)を、連続した領域に並べ直す作業のことです。これにより、磁気ヘッドの移動距離が短くなり、ファイルの読み込み速度が向上します。
スタートメニューで「デフラグ」または「ドライブの最適化」と検索してツールを起動し、対象のHDDを選択して「最適化」をクリックするだけで実行できます。通常は週に一度、自動で実行されるようスケジュールされていますが、手動で実行することで即時的な改善が見込めます。
SSDにデフラグは厳禁
デフラグは、あくまで物理的なヘッドが動くHDD専用のメンテナンス手法です。SSDは電気的にデータへアクセスするため、ファイルがどこにあってもアクセス速度は変わりません。SSDに対してデフラグを実行すると、メモリセルの寿命を無駄に消耗させるだけで、全くメリットがありませんので絶対に避けてください。
視覚効果よりパフォーマンス優先に設定

Windows 11の滑らかなアニメーションや半透明のウィンドウといった美しい視覚効果は、CPUやメモリに負荷をかけ、間接的にシステムの応答性を低下させる原因になります。これらの効果を無効にすることで、体感速度を向上させることができます。
設定は「システムのプロパティ」から行います。
- 「設定」→「システム」→「バージョン情報」と進み、「システムの詳細設定」をクリックします。
- 「詳細設定」タブの「パフォーマンス」セクションにある「設定」ボタンをクリックします。
- 「パフォーマンスオプション」ウィンドウで「パフォーマンスを優先する」を選択し、「適用」をクリックします。
この設定により、ウィンドウのアニメーションなどがなくなり、見た目は簡素になりますが、UIの反応がキビキビと感じられるようになります。
電源プランの見直しでパフォーマンスを最大化

意外と見落としがちなのが、Windowsの「電源プラン」設定です。特にノートPCでは、バッテリー駆動時間を延ばすために、デフォルトでCPUやHDDの性能を抑制する「省電力」や「バランス」プランに設定されていることがあります。これをパフォーマンス優先のプランに変更することで、ハードウェア本来の性能を引き出すことができます。
電源プランの変更はコントロールパネルから行います。
- スタートメニューを右クリックし、「電源オプション」を選択します。
- 表示されたプランの中から「高パフォーマンス」を選択します。(もし表示されていない場合は、「追加プランの表示」をクリックすると現れます)
- 選択するだけで設定は即座に適用されます。
「高パフォーマンス」プランは、消費電力が増加するため、特にノートPCをバッテリーで使用する際の駆動時間は短くなります。普段はACアダプタに接続して使用するデスクトップPCや、パフォーマンスを最優先したい場合に設定することをお勧めします。
Windows11でHDDが遅い問題の診断と最終手段
- Windows Update後の不具合を解消
- CPU使用率とメモリ不足がHDDへ与える影響
- 仮想メモリの最適化でスラッシングを緩和
- ウイルススキャンで悪意のある動作を排除
- CrystalDiskInfoでHDDの故障診断
- MiniTool Partition WizardでSSDへ簡単換装
- まとめ:Windows11でHDDが遅いならSSD化
Windows Update後の不具合を解消

システムのセキュリティと安定性のために不可欠なWindows Updateですが、そのプロセスはHDDに非常に高い負荷をかけます。更新ファイルのダウンロード、展開、インストールといった一連の作業が、数時間にわたってPCの動作を極端に遅くすることがあります。
アップデート後にパフォーマンスの低下が続く場合は、以下の手順を試してください。
- 待機する:まず「設定」→「Windows Update」を開き、更新が完全に完了しているか確認します。インストール中の場合は、終わるまで待ちましょう。
- ドライバーの確認:「デバイスマネージャー」を開き、警告アイコン(黄色の三角)が表示されているデバイスがないか確認します。あれば、メーカーのウェブサイトから最新ドライバーをインストールします。
- 更新のアンインストール:問題が特定のアップデート直後から始まった場合、「設定」→「Windows Update」→「更新の履歴」から、問題の更新プログラムをアンインストールすることで解決する可能性があります。
CPU使用率とメモリ不足がHDDへ与える影響

PCの動作が遅い原因は、必ずしもHDD単体にあるとは限りません。特にメモリ(RAM)不足は、HDDのパフォーマンスに致命的な影響を与えます。
物理メモリの容量が不足すると、WindowsはHDD上にある「ページファイル」と呼ばれる領域をメモリの延長として使用します。このHDDとメモリ間での頻繁なデータ交換(スワッピング)が発生する状態を「スラッシング」と呼びます。
ナノ秒単位で動作する高速なメモリと、ミリ秒単位で動作する低速なHDDとの間で絶え間ないデータスワップが発生すると、HDDは常に読み書きを行っている状態になり、ディスクI/Oが完全に麻痺します。これにより、システム全体がフリーズに近い状態に陥ります。タスクマネージャーでメモリ使用率が常に90%を超えている場合は、これが原因である可能性が高いでしょう。
仮想メモリの最適化でスラッシングを緩和

前述のスラッシング現象は、物理メモリが少ないPCで顕著に発生します。この問題を少しでも緩和するための応急処置として、「仮想メモリ(ページファイル)」のサイズを手動で適切に設定する方法があります。
Windowsは通常、仮想メモリのサイズを自動で管理していますが、これを固定値にすることでパフォーマンスが安定する場合があります。
- 「システムの詳細設定」を開き、「パフォーマンス」セクションの「設定」をクリックします。
- 「詳細設定」タブに切り替え、「仮想メモリ」セクションの「変更」ボタンをクリックします。
- 「すべてのドライブのページング ファイルのサイズを自動的に管理する」のチェックを外します。
- Cドライブを選択し、「カスタムサイズ」にチェックを入れます。
- 「初期サイズ」と「最大サイズ」に同じ値を入力します。一般的には、搭載している物理メモリ(RAM)の1.5倍から2倍程度の数値をメガバイト単位で設定することが推奨されます。(例:8GBのRAMなら、12288MBなど)
- 「設定」ボタンを押し、OKでウィンドウを閉じた後、PCを再起動すると設定が反映されます。
この設定は、あくまでメモリ不足を補うための対症療法です。頻繁にスラッシングが起こるような状況では、根本的な解決策は物理メモリの増設か、スワッピングが発生しても影響が少ないSSDへの換装となります。
ウイルススキャンで悪意のある動作を排除

パフォーマンス低下の原因として、マルウェアやウイルスの感染も常に疑うべきです。これらはユーザーに気づかれないようバックグラウンドで動作し、システムリソースを大量に消費するため、HDDの動作遅延とよく似た症状を引き起こします。
Windows 11には標準で強力な「Microsoft Defender」が搭載されています。「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「Windows セキュリティ」から「ウイルスと脅威の防止」を開き、スキャンを実行しましょう。
日常的なチェックには「クイックスキャン」で十分ですが、本格的な調査を行う際は、PC上の全ファイルを検査する「フルスキャン」の実行を推奨します。HDD環境では数時間以上かかる場合があるため、PCを使用しない夜間などに実行するのが賢明です。
CrystalDiskInfoでHDDの故障診断

動作の遅さが性能限界によるものではなく、HDD自体の物理的な故障の前兆である可能性もあります。HDDの健康状態は、「CrystalDiskInfo」という無料の定番ツールで簡単に確認できます。
このツールは、ドライブの自己診断機能であるS.M.A.R.T.情報を読み取り、健康状態を「正常」「注意」「異常」の3段階で評価してくれます。特に重要なのが以下の項目です。
属性名 | 意味 | 必要な対応 |
---|---|---|
代替処理済のセクタ数 | ディスク表面の不良箇所を予備領域で代替した回数。 | 値が増加傾向なら交換の準備を開始。 |
代替処理保留中のセクタ数 | 読み取りエラーが発生した不安定なセクタの数。 | 非常に危険な兆候。直ちにデータをバックアップ。 |
回復不可能セクタ数 | データの読み書きに失敗し、データ損失が確定した箇所。 | 極めて深刻な状態。直ちにバックアップし交換。 |
健康状態が「注意」と表示された場合、それはドライブが故障しかけている明確な警告です。いつアクセス不能になってもおかしくないため、最優先で全ての重要データをバックアップし、速やかに新しいドライブへの交換を計画してください。
MiniTool Partition WizardでSSDへ簡単換装

これまで紹介した対策はすべて対症療法に過ぎません。Windows 11とHDDの組み合わせで発生する遅延を根本的かつ恒久的に解決する唯一の方法は、ボトルネックとなっているHDDをSSDに換装することです。
SSDへの換装は、OSの起動時間を数分から十数秒に短縮し、アプリは瞬時に起動、ディスク使用率100%問題も完全に解消されるなど、劇的なパフォーマンス向上をもたらします。
OSやアプリを再インストールする手間を省き、現在の環境を丸ごと新しいSSDに移行するには、「MiniTool Partition Wizard」のようなクローン作成ソフトの利用が非常に便利です。
OS入りSSDのデータ移行について、具体的なやり方がわからずお困りではありませんか。パソコンの動作を高速化するためにSSDへ換装したいけれど、OSやアプリケーションを再インストールするのは手間がかかります。 Windowsの標準機能ででき[…]
簡単な移行手順
- 準備:現在のデータ量より大きい容量のSSDと、PCにSSDを一時的に接続するための「SATA-USB変換アダプタ」を用意します。
- 接続:新しいSSDをSATA-USB変換アダプタでPCのUSBポートに接続します。
- クローン作成:MiniTool Partition Wizardを起動し、「OSをSSD/HDに移行」ウィザードを選択。画面の指示に従い、コピー元(現在のHDD)とコピー先(新しいSSD)を間違えないように選択し、クローン処理を開始します。
- 物理的交換:クローン完了後、PCの電源を切り、古いHDDを取り外して、その場所に新しいSSDを取り付けます。
- 起動設定:PCの電源を入れ、BIOS/UEFI画面で起動順序を変更し、新しいSSDを一番目の起動デバイスに設定します。
これで、以前と全く同じ環境が、驚くほど高速化されたSSD上で起動します。
Windows11でHDDが遅いときの原因と対策まとめ
- Windows 11がHDDで遅い主な原因はディスク使用率が100%になること
- これはOSの要求性能とHDDの機械的なランダムアクセス性能の低さが原因
- タスクマネージャーでディスクのアクティブ時間が100%かを確認できる
- すぐに試せる対策はディスククリーンアップやストレージセンサーでの不要ファイル削除
- Windowsと同時に起動するスタートアッププログラムの無効化も効果的
- HDDの断片化を解消するデフラグは定期的なメンテナンスとして有効
- SSDに対してデフラグを実行すると寿命を縮めるため絶対に避けるべき
- アニメーションなどを無効化しパフォーマンスを優先する設定も体感速度を上げる
- 電源プランを「高パフォーマンス」に変更するとハードウェア性能を最大限に引き出せる
- Windows UpdateのプロセスはHDDに高負荷をかけるため一時的に遅くなる
- メモリ不足はスラッシング現象を引き起こしHDDの動作を著しく悪化させる
- 仮想メモリのサイズを固定することでスラッシングをある程度緩和できる場合がある
- パフォーマンス低下の原因がマルウェアでないかウイルススキャンで確認することも重要
- CrystalDiskInfoでHDDの健康状態を診断し故障の兆候がないか確認する
- S.M.A.R.T.情報で「注意」が出たら即座にデータのバックアップを行うべき
- 様々な対策を講じても改善しない場合の唯一の根本解決策はSSDへの換装
- MiniTool Partition Wizard等のツールを使えば現在の環境を丸ごとSSDに移行可能