スマートフォンは問題なくWi-Fiに接続できているのに、なぜかパソコンだけ繋がらない、あるいはパソコンだけWiFiを認識しないという状況は、非常に困惑するトラブルです。この問題は、OSアップデートの不具合や、ネットワークアダプターのドライバ更新が原因であることも少なくありません。
また、IPアドレスの取得失敗やDNS設定のエラー、キャッシュクリアが必要なケースも考えられます。さらに深掘りすると、ルーターのDHCP制限やMACアドレスフィルタリングといった設定、パソコンが特定の周波数帯に非対応である可能性も浮上します。
時には、機内モードが有効になっていたり、物理的な無線モジュールが無効になっているだけの単純な見落としや、BIOS設定で無線がOFFになっていることも。その他、WLANサービスが停止していたり、セキュリティソフトのファイアウォールがブロックしているなど、原因は多岐にわたります。
このような複雑に見える状況でも、ルーターの再起動といった簡単な手順から、最終手段であるWindowsのネットワークリセットまで、一つずつ原因を切り分けていくことで解決へと導くことができます。
- パソコンだけWi-Fiに繋がらない時の基本的な確認手順
- WindowsのOSやドライバーに起因する問題の解決策
- ルーターの高度な設定が原因となっている場合の対処法
- 物理的な故障を見極めるための最終的な診断方法
「パソコンでWifiが繋がらないがスマホは繋がる」まず試す基本対処法
- まずは基本のルーター再起動を試す
- 機内モード有効と無線モジュール無効の確認
- セキュリティソフトのファイアウォールブロック
- ドライバ更新とネットワークアダプターの確認
- パソコンだけWiFiを認識しない時の原因
- OSアップデート不具合が原因の場合
まずは基本のルーター再起動を試す

ネットワークトラブルにおいて、最も基本的かつ効果的な解決策がルーターの再起動です。ルーターは24時間稼働し続ける精密機器であり、内部に熱がこもったり、アクセスログが蓄積したりすることで動作が不安定になることがあります。再起動することで、これらの問題が一度にリセットされ、正常な状態に戻る可能性が高いです。
正しい手順で再起動を行うことが重要です。特にモデム(ONU)とルーターが別々の機器の場合、電源を落とす順番と入れる順番が接続の安定性を左右します。
正しい再起動の手順
- Wi-Fiルーターの電源プラグを抜く。
- モデム(ONU)の電源プラグを抜く。
- 最低1分以上待ってから、先にモデムの電源プラグを差し込む。
- モデムのランプが安定するまで2〜3分待つ。
- モデムのランプが安定したら、Wi-Fiルーターの電源プラグを差し込む。
この手順は、ルーターがモデムから正常にインターネット接続情報を取得するために不可欠です。これは設定を保持したまま再稼働させる「再起動」であり、初期化ボタンを押す「リセット」とは異なるため、Wi-Fiのパスワードなどが消えることはありません。
機内モード有効と無線モジュール無効の確認

ノートパソコンで特に多い見落としが、「機内モード」が意図せず有効になっているケースです。機内モードは、Wi-FiやBluetoothなど全ての無線通信を一括でオフにする機能です。同時に、Wi-Fi機能自体を個別にオン/オフする物理スイッチやキーボードショートカットも存在します。
確認すべき3つの階層
これらの設定は階層構造になっており、物理的な設定が優先されます。以下の順で確認することが重要です。
- 物理スイッチの確認
ノートパソコンの側面や前面に、アンテナマークの付いた物理的なスライドスイッチがないか確認します。オフになっていればオンに切り替えてください。 - ファンクションキーの確認
キーボードの Fn キーと、飛行機やアンテナのマークが印字されたファンクションキー(例: F2)を同時に押して、無線機能のオン/オフを切り替えてみてください。 - OS上の設定確認
Windowsの設定から確認します。タスクバー右下のアイコンから「クイック設定」を開き、「機内モード」がオフになっているか確認します。また、「設定」→「ネットワークとインターネット」→「Wi-Fi」で、Wi-Fiがオンになっているかも確認してください。
UI上ではオフなのに有効にならない場合
Windowsの「高速スタートアップ」機能の影響で、シャットダウン時の設定が保存されてしまうことがあります。Shift キーを押しながらシャットダウンを選択して「完全シャットダウン」を行い、再度起動すると解決することがあります。
セキュリティソフトのファイアウォールブロック

パソコンを保護するためのセキュリティソフトやWindows Defenderファイアウォールが、安全なはずの自宅Wi-Fiとの通信を誤って遮断してしまうことがあります。これが原因か切り分けるため、一時的にファイアウォール機能を無効にして接続を試すのが有効な診断方法です。
診断と解決の手順
まず、タスクバーの通知領域にあるセキュリティソフトのアイコンを右クリックするか、プログラムを起動して、「保護を一時的に停止する」「ファイアウォールを無効にする」といった項目を選択します。この状態でWi-Fiに接続できれば、ファイアウォールが原因であると特定できます。
診断が終わったら、必ずファイアウォールを再度有効にしてください。無効のままではセキュリティリスクに晒されます。
恒久的な対策としては、ファイアウォールの設定を見直し、自宅のネットワークを「プライベートネットワーク(信頼済みネットワーク)」として設定し直す必要があります。初めて接続する際に表示されるダイアログで「いいえ」を選択すると「パブリック」として扱われ、厳しい制限がかかるため、この設定を変更することで問題が解決するケースが多くあります。
ドライバ更新とネットワークアダプターの確認

ドライバーとは、Windows OSがWi-Fiアダプターなどのハードウェアを制御するための重要なソフトウェアです。このドライバーが破損したり、Windows Updateによって互換性のないバージョンに更新されたりすると、Wi-Fiが正常に機能しなくなります。
管理は「デバイスマネージャー」で行います。(スタートボタンを右クリック → 「デバイスマネージャー」を選択)
デバイスマネージャーでの主な操作
- ドライバーの更新
「ネットワークアダプター」内のWi-Fiアダプターを右クリックし、「ドライバーの更新」→「ドライバーを自動的に検索」を試します。 - ドライバーのロールバック(元に戻す)
アップデート後に不調になった場合に非常に有効です。プロパティの「ドライバー」タブから「ドライバーを元に戻す」をクリックします。 - ドライバーの再インストール
ドライバーが破損している場合に試します。デバイスを右クリックして「デバイスのアンインストール」を選択し(このとき、ドライバーソフトウェアの削除チェックボックスはオフのまま)、パソコンを再起動すると、基本的なドライバーが自動で再インストールされます。
特に、パソコンメーカーが提供する専用ドライバーが、Windows Updateによって汎用ドライバーに上書きされて不具合が起きるケースがあります。その場合は、ロールバックや、パソコンメーカーの公式サイトから正しいドライバーをダウンロードして手動でインストールすることが最も確実な解決策です。
パソコンだけWiFiを認識しない時の原因

Wi-Fiに「接続できない」のではなく、ネットワーク名(SSID)が一覧に「表示すらされない」場合、原因はさらに絞り込まれます。スマートフォンでは見えているのにパソコンだけが認識しないのは、深刻な症状の可能性があります。
考えられる主な原因
- SSIDステルス機能
ルーターがネットワーク名を隠す「ステルス機能」を有効にしている場合、パソコンはSSIDを自動で検出できません。この場合、Windowsのネットワーク設定から手動でSSIDやパスワードを入力して接続プロファイルを作成する必要があります。 - ドライバーの完全な破損
ドライバーが深刻に破損していると、Wi-Fiアダプターが電波をスキャンする機能自体を果たせません。デバイスマネージャーで「このデバイスのドライバーソフトウェアを削除します」にチェックを入れて完全に削除し、メーカー公式サイトからクリーンインストールを試します。 - ハードウェアの物理的な故障
上記のいずれでも解決せず、デバイスマネージャーでアダプターが認識されない、またはエラーコードが表示される場合、Wi-Fiアダプター自体の物理的な故障が濃厚です。安価なUSB接続の外付けWi-Fi子機を利用するのが手軽な代替策となります。
OSアップデート不具合が原因の場合

Windows Updateはセキュリティ上不可欠ですが、時に既存のドライバーや設定との互換性問題を引き起こし、Wi-Fi接続に不具合を発生させることがあります。アップデート直後から問題が発生したことが明らかな場合は、アップデート自体を原因と疑うべきです。
アップデート後の対処法
- ネットワークドライバーのロールバック
最も影響を受けやすいのがドライバーです。前述の手順で「ドライバーを元に戻す」を試すのが最初のステップです。 - Windowsトラブルシューティングツール
「設定」→「システム」→「トラブルシューティング」から、「インターネット接続」と「ネットワークアダプター」の診断ツールを実行します。 - 更新プログラムのアンインストール(最終手段)
上記で解決しない場合、問題の原因となった更新プログラムをアンインストールします。「設定」→「Windows Update」→「更新の履歴」→「更新プログラムをアンインストールする」から、問題発生直前にインストールされたもの(KBから始まる番号)を選択して削除します。
更新プログラムをアンインストールした後は、問題が再発しないよう、一時的にWindows Updateを停止する設定を行うことを推奨します。
「パソコンでWifiが繋がらないがスマホは繋がる」詳細設定と最終手段
- IPアドレス取得失敗とDNS設定エラー対処
- 周波数帯非対応の可能性を調べる
- MACアドレスフィルタリングとルーターのDHCP制限
- WLANサービス停止の確認と起動
- BIOS設定で無線がOFFになっていないか
- 最終手段のWindowsネットワークリセット
- パソコンでWifiが繋がらないがスマホは繋がる時の総まとめ
IPアドレス取得失敗とDNS設定エラー対処

Wi-Fiに接続アイコンは表示されていてもインターネットに繋がらない場合、IPアドレスの取得失敗やDNSのエラーが考えられます。これらはコマンドプロンプトを使って修復できることがあります。
IPアドレスの再取得(DHCPの問題)
IPアドレスはネットワーク上の「住所」のようなものです。これがルーターから正常に割り当てられないと通信できません。IPアドレスが「169.254.x.x」で始まっている場合、取得失敗の典型的な兆候です。以下のコマンドで再取得を試みます。
管理者としてコマンドプロンプト(またはターミナル)を起動し、以下のコマンドを順番に実行します。
ipconfig /release
ipconfig /renew
DNSキャッシュのクリア
DNSはウェブサイトのドメイン名(例: google.com)をIPアドレスに変換する仕組みです。この変換情報の一時データ(キャッシュ)が破損すると、サイトが表示できなくなります。以下のコマンドでキャッシュを削除します。
管理者としてコマンドプロンプト(またはターミナル)を起動し、以下のコマンドを実行します。
ipconfig /flushdns
「DNS リゾルバー キャッシュは正常にフラッシュされました。」と表示されれば完了です。これは安全に実行できる操作です。
周波数帯非対応の可能性を調べる

現代のWi-Fiは主に「2.4GHz」と「5GHz」の2つの周波数帯を使用しています。スマートフォンは両方に対応していることが多いですが、古いパソコンは2.4GHz帯にしか対応していない場合があります。ルーターが5GHz帯の電波しか発信していない設定だと、そのパソコンはWi-Fiを認識できません。
特徴 | 2.4 GHz帯 | 5 GHz帯 |
---|---|---|
通信範囲 | 遠くまで届き、障害物に強い | 範囲は狭く、障害物に弱い |
通信速度 | 比較的遅い | 非常に速い |
電波干渉 | 電子レンジなどと干渉しやすく不安定 | 干渉が少なく安定 |
互換性 | ほぼ全ての機器で利用可能 | 比較的新しい機器のみ対応 |
確認と対処法
- パソコンの対応周波数を確認する
コマンドプロンプトでnetsh wlan show drivers
と入力します。「サポートされている無線の種類」に「802.11a」や「802.11ac」があれば5GHzに対応しています。 - ルーターの設定を確認する
ルーターの管理画面にログインし、2.4GHz帯のWi-Fiが有効になっているか確認します。多くのルーターはSSID名で「My-WiFi-2G」「My-WiFi-5G」のように区別しているので、パソコンのWi-Fi一覧に2.4GHz帯のSSIDが表示されるか確認し、そちらに接続してみてください。
MACアドレスフィルタリングとルーターのDHCP制限

ルーターの高度なセキュリティ設定やリソース管理機能が、意図せずパソコンの接続を阻害している可能性があります。
MACアドレスフィルタリング
これは、事前に登録した機器のMACアドレス(個別の識別番号)以外からの接続を拒否するセキュリティ機能です。この機能が有効な場合、たとえ正しいパスワードを入力しても、MACアドレスが未登録のパソコンは接続できません。
対処法:ルーターの管理画面にログインし、「MACアドレスフィルタリング」や「アクセス制限」の設定を一時的に無効にして接続できるか試します。接続できたら、パソコンのMACアドレス(ipconfig /all
の「物理アドレス」で確認)を許可リストに追加してください。
近年のOSには、プライバシー保護のために接続ごとにランダムなMACアドレスを使う機能があります。この機能が有効だとMACアドレスフィルタリングと相性が悪いため、パソコン側でこの機能をオフにする必要があります。
ルーターのDHCP制限
ルーターが割り当てられるIPアドレスの数(IPアドレスプール)には上限があります。家庭内のスマートデバイスが増え、このプールが枯渇すると、新しく接続しようとしたパソコンにIPアドレスを割り当てられなくなります。
対処法:ルーターの管理画面で「DHCPサーバー設定」などを確認し、IPアドレスの割り当て範囲を広げる(例: 192.168.1.100~150 を ~200 に変更)か、IPアドレスの貸出期間(リース時間)を短く設定することで、使われなくなったIPアドレスが早く解放されるようになります。
WLANサービス停止の確認と起動

Windowsには、OSの機能を支える「サービス」というプログラムがバックグラウンドで多数動作しています。Wi-Fi機能は「WLAN AutoConfig」というサービスが中心的な役割を担っており、これが停止しているとWi-Fiは一切利用できません。
サービスの確認と再起動の手順
- Windows + Rキーで「ファイル名を指定して実行」を開き、「services.msc」と入力してEnterキーを押します。
- サービス一覧から「WLAN AutoConfig」を探します。
- 「状態」が「実行中」に、「スタートアップの種類」が「自動」になっているか確認します。
- もし停止していたら、右クリックして「開始」を選択します。「スタートアップの種類」が「自動」でなければ、プロパティから「自動」に変更してください。
何らかの理由でこのサービスが停止または無効になっていると、ドライバーやハードウェアが正常でもWi-Fiに接続できなくなります。
BIOS設定で無線がOFFになっていないか

BIOS/UEFIは、Windowsが起動する前に動作する、パソコンのハードウェアを制御する最も基本的なシステムです。このBIOSレベルで内蔵Wi-Fiアダプターが無効化されていると、OSからはハードウェアが存在しないかのように見えてしまいます。
確認が必要な症状と手順
デバイスマネージャーの「ネットワークアダプター」一覧にWi-Fiアダプターが全く表示されない、またはドライバーをインストールしようとすると「対応デバイスが見つかりません」とエラーが出る場合は、BIOSの設定を疑います。
確認手順の例
- パソコンの電源を入れ、メーカーロゴ表示中に指定のキー(F2, Deleteなど)を連打してBIOS設定画面に入ります。
- メニューから「Advanced」や「Onboard Devices」などの項目を探します。
- 「Onboard WLAN」「Wireless LAN」といった項目が「Disabled」(無効)になっていないか確認します。
- もし無効なら「Enabled」(有効)に変更し、設定を保存して(通常はF10キー)再起動します。
意図せず設定が変更されることは稀ですが、ソフトウェア的な対処法を全て尽くしてもデバイスが認識されない場合の最後の砦となります。
最終手段のWindowsネットワークリセット

これまで解説した全ての方法を試しても解決しない場合、Windowsのネットワーク設定全体が根深く破損している可能性があります。その場合の最終手段が「ネットワークのリセット」機能です。
これは、全てのネットワークアダプターを一度削除して再インストールし、TCP/IPプロトコルなどの通信コンポーネントを初期設定に戻す、非常に強力な修復機能です。
実行手順:「設定」→「ネットワークとインターネット」→「ネットワークの詳細設定」(Win11)または「状態」(Win10)→「ネットワークのリセット」と進み、「今すぐリセット」をクリックします。5分後にPCが自動で再起動します。
実行前の重要な注意点
「ネットワークのリセット」は効果が高い反面、以下の設定がすべて消去されるため、実行は慎重に判断してください。
- 保存された全Wi-Fiパスワード:再起動後、パスワードの再入力が必要です。
- VPNクライアントソフトの設定:再設定や再インストールが必要になる場合があります。
- 手動で設定した静的IPアドレスなど:すべてのカスタム設定が初期化されます。
パソコンでWifiが繋がらないがスマホは繋がる:総まとめ
- まず最も簡単な対処法としてルーターとモデムの電源を順番通りに再起動する
- ノートPCの物理スイッチやFnキーで無線モジュールが無効になっていないか確認
- Windowsのクイック設定や設定画面で機内モードが有効になっていないか調べる
- セキュリティソフトのファイアウォール機能を一時的に無効化して接続を試す
- デバイスマネージャーを開きネットワークアダプターのドライバーを更新・再インストール
- Windows Update後に問題が起きたならドライバーのロールバックを試す
- SSIDが一覧に表示されない場合はルーターのステルス機能やハード故障を疑う
- コマンドプロンプトでipconfig /releaseとrenewを実行しIPアドレスを再取得
- ウェブサイトが表示できない場合はipconfig /flushdnsでDNSキャッシュをクリア
- 古いPCの場合ルーターが発信する5GHz帯の周波数帯非対応の可能性を調べる
- ルーターの管理画面でMACアドレスフィルタリングが有効になっていないか確認
- 接続機器が多い場合はルーターのDHCPによるIPアドレス割り当て上限を確認
- services.mscからWLAN AutoConfigサービスが停止していないかチェック
- デバイスが認識されない場合BIOS設定で無線LANが無効化されていないか確認
- あらゆるソフトウェア的対処で解決しない場合はWindowsネットワークリセットを実行