マザーボードDDR4・DDR5両対応は可能?違いと選び方

新しいパソコンの自作やアップグレードを検討する際、「手持ちのDDR4メモリを活かしたいけど、最新のCPUも使いたい」「マザーボードはDDR4とDDR5に両対応できるの?」といった疑問を持つ方は少なくありません。

結論から言うと、1枚のマザーボードでDDR4とDDR5の両方に対応することは物理的に不可能です。この記事では、そもそもマザーボードでDDR4とDDR5の両対応が可能であるのかという基本的な疑問から、両者の間に互換性がない理由、スロットの切り欠きの見分け方、そして性能の違いまでを徹底的に解説します。

さらに、今買うならどっちを選ぶべきか、IntelやAMDといったCPUごとのマザーボードの対応状況を整理し、コスパに優れたDDR4対応マザーボードから、ASUS製のおすすめDDR5対応マザーボードまで、あなたのPCビルドに最適な一枚を見つけるための情報を提供します。

  • マザーボードがDDR4とDDR5に両対応できない技術的な理由
  • DDR4とDDR5の性能差や見分け方
  • IntelとAMDプラットフォームでのメモリ対応状況
  • 用途と予算に合わせた最適なマザーボードの選び方

マザーボードはDDR4とDDR5に両対応?その仕組みを解説

  • 結論:マザーボードのDDR4・DDR5両対応は不可能
  • DDR4とDDR5に互換性なし!スロット切り欠きの見分け方
  • 性能の決定的違いは?DDR4とDDR5を比較
  • ゲーミング性能におけるDDR4とDDR5の差
  • クリエイティブ作業でのDDR4とDDR5の優位性
  • 価格の逆転現象!DDR4とDDR5今買うならどっち?

結論:マザーボードのDDR4・DDR5両対応は不可能

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PC自作の世界でよくある疑問の一つに、「1枚のマザーボードでDDR4とDDR5、両方のメモリ規格に対応できるのか?」というものがあります。結論から言うと、これは不可能です。マザーボードは設計段階でDDR4かDDR5のどちらか一方のメモリ規格にしか対応しないように作られています。

過去には、DDR3とDDR4のように異なる世代のメモリスロットを両方搭載した特殊なマザーボードも存在しましたが、現在のDDR4とDDR5においては、そのような製品はコンシューマー市場には存在しません。この非互換性は、CPUに内蔵されたメモリコントローラやマザーボードの回路設計、そしてメモリ自体の物理的・電気的な仕様が根本的に異なることに起因します。

混在や交換は絶対にNG

DDR4スロットにDDR5メモリを挿したり、その逆を行ったりすることは物理的にできない設計になっています。もし無理に装着しようとすると、マザーボードやメモリモジュールが物理的に破損し、二度と使えなくなる可能性が非常に高いため、絶対に試さないでください。

DDR4とDDR5に互換性なし!スロット切り欠きの見分け方

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DDR4とDDR5に互換性がない最も分かりやすい理由が、メモリモジュールとマザーボードスロットの物理的な形状の違いです。両者には、誤った取り付けを防ぐための安全設計が施されています。

切り欠き(キー)の位置

メモリモジュールの基板下部にある「切り欠き」の位置が、DDR4とDDR5では異なります。これにより、DDR5メモリをDDR4スロットに挿入しようとしても、物理的に入らないようになっています。これはユーザーを高価なミスから守るための意図的な設計です。

上の画像のように、ピンの途中にある切り欠きの場所がズレていることがわかります。デスクトップPC用のメモリモジュール(UDIMM)はどちらも288本のピンを備えていますが、各ピンの役割(ピンアウト)も全く異なるため、電気的な互換性もありません。

電気的な仕様の違い

物理的な形状だけでなく、電気的な仕様も根本的に異なります。

  • 動作電圧: DDR4の標準電圧が1.2Vなのに対し、DDR5は1.1Vと低電圧化され、電力効率が向上しています。
  • 電力管理の仕組み: DDR4では電力管理をマザーボード側で行っていましたが、DDR5では各メモリモジュール自体に電力管理集積回路(PMIC)が搭載されています。これにより、より精密な電力制御が可能になり安定性が向上しましたが、電力供給のアーキテクチャが完全に変わったため、互換性がなくなりました。

性能の決定的違いは?DDR4とDDR5を比較

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DDR5はDDR4からアーキテクチャレベルで大きな進化を遂げており、単なる高速化に留まらない性能向上を実現しています。その違いを比較表で見てみましょう。

機能 DDR4 DDR5
データレート (JEDEC標準) 2133~3200 MT/s 4800~8800 MT/s以上
帯域幅 (理論値) 約25.6 GB/s (DDR4-3200) 約51.2 GB/s (DDR5-6400)
動作電圧 1.2V 1.1V
チャネルアーキテクチャ 1モジュールあたり 64-bit x1 1モジュールあたり 32-bit x2
最大モジュール容量 32GB (コンシューマ向け) 128GB (理論値)
電力管理 (PMIC) マザーボード上に搭載 各モジュール上に搭載
オンダイECC 非搭載 標準搭載

最も大きな違いは、メモリ帯域幅がDDR4の約2倍になっている点です。これは、データ転送の「道路」が2倍に広がったとイメージすると分かりやすいでしょう。また、DDR5は1枚のモジュールが2つの独立したサブチャネルとして動作するため、特にコア数の多い最新CPUの性能を効率的に引き出すことができます。

CASレイテンシ(CL)の数値に惑わされないで

DDR5はDDR4に比べてCASレイテンシ(CL)の数値が大きく(例: CL16 vs CL36)、一見すると応答が遅いように見えます。しかし、実際の応答速度を示す「実効レイテンシ」はデータレートも加味して計算するため、高速なDDR5-6400 CL32とDDR4-3200 CL16の実効レイテンシはほぼ同じになります。帯域幅が圧倒的に広いため、ほとんどの用途でDDR5が有利です。

ゲーミング性能におけるDDR4とDDR5の差

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DDR5登場初期は、ゲーミング性能におけるDDR4との差は僅かでした。しかし、技術が成熟し高速なDDR5メモリが普及した現在、その状況は大きく変わっています。

DDR5の広い帯域幅は、CPUからグラフィックボードへのデータ供給を高速化し、特にCPU性能がボトルネックになりやすい状況でフレームレート(FPS)の向上に繋がります。

近年の検証データによると、AAAタイトルではDDR4と比較して平均FPSが5%~10%、タイトルによっては30%以上も向上するケースが報告されています。特に重要なのが、フレームレートが落ち込む場面での最低FPS(1% Low FPS)の改善です。これにより、カクつき(スタッタリング)が減少し、より滑らかで安定したゲーム体験が可能になります。

ゲーミングPCの「スイートスポット」

現在のゲーミングPCにおけるメモリの最適構成(スイートスポット)は、32GB (16GB×2) のDDR5-6000 CL30とされています。この構成は、性能とコストのバランスが最も優れており、特にAMD RyzenプラットフォームではCPUの性能を最大限に引き出す上で推奨されています。

クリエイティブ作業でのDDR4とDDR5の優位性

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ゲーミング以上にDDR5の恩恵を受けられるのが、動画編集や写真現像、ゲーム開発といったクリエイティブな作業です。これらのアプリケーションは大量のデータをメモリ上で処理するため、メモリ帯域幅が作業効率に直結します。

動画編集(Premiere Proなど)

4Kや8Kなどの高解像度動画の編集では、DDR5の広帯域幅がタイムラインの快適な操作やエフェクトのリアルタイムプレビュー、そして最終的な書き出し(エンコード)時間の短縮に大きく貢献します。検証によると、特に処理の重いH.265コーデックの書き出しでは、DDR4環境に比べて明確な時間短縮効果が見られます。

写真編集(Lightroomなど)

数百枚のRAW画像を一括でJPEGに書き出すようなバッチ処理において、DDR5はDDR4よりも処理時間を短縮できます。処理枚数が多くなるほど、その差は顕著になります。

ゲーム開発(Unreal Engineなど)

シェーダーコンパイルのようなCPUとメモリに極めて高い負荷がかかる作業では、DDR5がDDR4に対して最大12%も高速というデータもあり、開発者の待機時間を大幅に短縮します。

価格の逆転現象!DDR4とDDR5今買うならどっち?

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長らく「コストを抑えるならDDR4」が常識でしたが、その状況は大きく変化しました。現在、DDR4メモリの価格がDDR5と同等、あるいはそれ以上に高騰する「価格の逆転現象」が起きています。

この背景には、主要なメモリメーカーが旧世代となったDDR4の生産を縮小し、より需要の高いDDR5やAIサーバー向けのHBM(High Bandwidth Memory)に製造ラインを振り向けていることがあります。DDR4の供給が減る一方で、既存システムのアップグレード需要は依然として存在するため、価格が高止まりしているのです。

結論:新規ビルドならDDR5一択

性能、将来性、そして価格の3つの観点から、2025年現在、新規でPCを組むのであればDDR5を選ぶのが唯一の合理的な選択です。プラットフォーム全体のコストで見てもDDR5構成は非常に競争力があり、もはやDDR4を積極的に選ぶ理由はありません。

CPU別マザーボードDDR4・DDR5両対応プラットフォーム

  • Intel CPUとマザーボードの対応状況
  • AMD CPUとマザーボードの対応状況
  • コスパで選ぶDDR4対応マザーボード3選
  • おすすめの高性能DDR5対応マザーボード【ASUS】
  • 将来性で考えるマザーボード選びのポイント
  • まとめ:マザーボードのDDR4・DDR5両対応を理解する

Intel CPUとマザーボードの対応状況

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Intelは、DDR5への移行期において柔軟なアプローチを取りました。第12世代Coreプロセッサ(Alder Lake)から第14世代(Raptor Lake Refresh)までのLGA1700ソケット対応CPUは、メモリコントローラがDDR4とDDR5の両方をサポートしています。

このため、マザーボードメーカーは同じチップセット(例: Z790, B760)を搭載していても、

  • DDR4メモリスロットを持つモデル
  • DDR5メモリスロットを持つモデル

の2種類を市場に投入しました。これにより、ユーザーは予算や手持ちのパーツに応じてメモリ規格を選べるというメリットがありました。例えば、ASRockの「Z790 Pro RS/D4」はDDR4対応、「Z790 Pro RS」はDDR5対応といったように、型番で区別されています。

注意:CPUは両対応でもマザーボードは片方のみ

重要なのは、CPUが両対応であっても、選択したマザーボードが対応するメモリはどちらか一方に固定されるという点です。DDR4マザーボードを購入した場合、将来DDR5メモリに交換することはできません(逆も同様です)。

AMD CPUとマザーボードの対応状況

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Intelの段階的な移行とは対照的に、AMDはRyzen 7000シリーズとAM5ソケットの導入にあたり、DDR5への完全移行を選択しました。

AM5プラットフォーム(X670, B650, A620, X870, B850チップセットなど)は、DDR5メモリ専用として設計されており、DDR4には一切対応していません。

この明確な方針により、AMDの最新プラットフォームでPCを組む場合、メモリの選択肢はDDR5のみとなり、ユーザーが迷う余地はありません。これによりエコシステム全体が最新技術へ移行するメリットがありましたが、AM5登場当初はプラットフォーム全体の初期導入コストが高くなる一因ともなりました。

コスパで選ぶDDR4対応マザーボード3選

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新規購入ではDDR5が推奨されますが、「既に高性能なDDR4メモリを持っていて、CPUとマザーボードだけを最小予算でアップグレードしたい」という限定的なケースでは、DDR4対応マザーボードが選択肢になります。ここではIntel B760チップセット搭載モデルを紹介します。

ASUS TUF GAMING B760M-PLUS D4

12+1フェーズの強力な電源回路を搭載し、価格に対して非常に優れた安定性を提供します。2.5GbE LANや十分なM.2スロットなど、基本的な機能も充実しており、コストパフォーマンスに優れた鉄板モデルです。

ASRock B760 Pro RS/D4 WiFi

手頃な価格帯ながらWi-Fi 6Eを標準搭載し、高い接続性を確保しています。シルバーのヒートシンクが特徴的なデザインも人気です。

MSI PRO B760M-A WIFI DDR4

メモリのオーバークロック耐性に定評があり、手持ちのDDR4メモリの性能を最大限に引き出したい場合に適しています。ビジネス用途にも耐えるシンプルなデザインと堅牢な作りが特徴です。

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おすすめの高性能DDR5対応マザーボード【ASUS】

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DDR5プラットフォームで新規にPCを構築するユーザー向けに、評価の高いASUS製のマザーボードを目的別に紹介します。

総合バランス型(Intel Z790):ASUS ROG STRIX Z790-E GAMING WIFI II

性能、機能、デザインのバランスが非常に高く、ハイエンドゲーミングやコンテンツ制作において最高の選択肢の一つです。18+1フェーズの強力なVRM、PCIe 5.0対応スロット、5基のM.2スロットなど、将来を見据えた拡張性も万全です。

主流ゲーミング(AMD B650E):ASUS TUF GAMING B650-PLUS WIFI

AM5マザーボードの定番モデルとして高い評価を得ています。堅牢な電源回路と十分な機能セットを、比較的手頃な価格で提供しており、多くのゲーマーにとって最適な選択肢です。M.2スロットにネジ不要でSSDを取り付けられる「M.2 Q-Latch」など、組み立てやすさも魅力です。

コストパフォーマンス型(Intel Z790):ASUS PRIME Z790-A WIFI

ROGシリーズほどの豪華さはありませんが、16+1フェーズのVRMやPCIe 5.0スロットなど、Z790の主要な機能をより抑えた価格で提供します。性能と価格のバランスを重視するユーザーにとって、非常に魅力的な選択肢です。

将来性で考えるマザーボード選びのポイント

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PCパーツを選ぶ際、現在の性能だけでなく将来性も重要な判断基準です。メモリ規格の観点から見ると、その選択は明らかです。

IntelとAMDの両社ともに、次世代以降のプラットフォームではDDR5のみをサポートする方針を固めています。Intelの次期ソケット「LGA 1851」や、将来のAMDプラットフォームでDDR4がサポートされることはありません。

つまり、2025年現在にDDR4対応マザーボードを新規で購入するということは、そのプラットフォームのアップグレードパスを自ら閉ざすことを意味します。将来、最新CPUに換装したくなった際に、マザーボードとメモリも同時に買い替える必要が出てきてしまいます。

長期的な視点での投資

DDR5プラットフォームは、現在進行形で進化しており、より高速なメモリが登場する可能性もあります。長期的に見てシステムの価値を維持し、将来のアップグレードにも柔軟に対応するためには、DDR5プラットフォームへの投資が最も賢明な選択と言えるでしょう。

まとめ:マザーボードのDDR4・DDR5両対応を理解する

  • 1枚のマザーボードでDDR4とDDR5の両方に対応することは不可能
  • DDR4とDDR5はスロットの切り欠き位置が異なり物理的な互換性はない
  • 動作電圧や電力管理の仕組み(PMIC)も根本的に異なり電気的互換もない
  • DDR5はDDR4の約2倍のメモリ帯域幅を実現しパフォーマンスが大幅に向上
  • ゲーミングでは平均および最低FPSが向上しより滑らかな体験が可能になる
  • 動画編集などのクリエイティブ作業では処理時間の短縮に大きく貢献する
  • かつて高価だったDDR5は価格が安定しDDR4との価格差はほぼなくなった
  • DDR4は生産縮小により供給が減り価格が高止まりする逆転現象が起きている
  • 新規でPCを組むなら性能・価格・将来性の全てでDDR5が最適な選択肢
  • IntelのLGA1700 CPUはDDR4とDDR5の両方に対応している
  • Intel向けにはDDR4用とDDR5用のマザーボードがそれぞれ販売されている
  • AMDのAM5プラットフォームはDDR5メモリ専用でDDR4には非対応
  • 既存のDDR4メモリ資産を活かす場合のみDDR4マザーボードが選択肢になる
  • 将来のCPUアップグレードを見据えるならDDR5プラットフォームが必須
  • PCの長期的な価値を最大化するためにはDDR5への投資が賢明な判断と言える